ごく基本的なこと

ささいなことのメモ

借りた本

返却期限は10月1日。

廣松渉の著作を読んだことがないので新書からあたってみるか、というのがひとつ。その時に棚で見つけて気になった梅原猛の本がひとつ。哲学の話だけだと疲れるので、より実際的な、具体例の豊富なテーマの社会についての本をひとつ。

「人類哲学」というのはいったいいわゆる哲学とどういうところが違うのか、何を考えるつもりなのか、とても気になる本だ。

最後の本は生き方と書いてあるけれども、どう生きるべきかを説く本ではなく、人がどのように生きているかの実例とともに示すような本ではないか、というのが立ち読みでの印象。

哲学の本は、倫理の話になったとき、どのような行動実践をすべきかという話が出てくるかもしれない。できることが精密な現状確認だけなら、面白くはない。そこから新しい問題や、何かの予測ができるようなものであればよいのだが(精密に現状を確認することによって、自然にそういったことに気づく、というのも素朴に思える)。

 

人類哲学序説 (岩波新書)

人類哲学序説 (岩波新書)

 
新哲学入門 (岩波新書)

新哲学入門 (岩波新書)

 
社会人の生き方 (岩波新書)

社会人の生き方 (岩波新書)

 


返却したので、感想をざっと。

『人類哲学序説』は、まず著者(梅原猛)の言う「文明の危機」が具体的にどういうものなのかがきちんと語られている気がしない。その漠然とした不安に対して、著者が提唱する思想がどのように働くのかもいまひとつよくわからない。西洋哲学を専門として40歳近くまで(著者はこの本を書いた年に米寿なので、おおよそ半世紀前だ)研究してきたということもあり、その頃に学んでいた哲学者についての話は信頼できると思う(半世紀前の水準として)。全5回の講義をもとに本にしたということもあってか、繰り返し出てくる内容や論理的につながりの悪い箇所がある。全体的な説明を類比に頼りすぎという気もする。 

『新哲学入門』は、廣松渉の文体に度肝を抜かれた。漢字の使い方が非常に独特で、見たこともないような熟語を平気で使う。ほとんど造語の域である。「秋」という漢字に「とき」というルビが振ってあったりする。原稿を書いたのが秋だったんだろうか?と思ってしまう。肝心の内容は、分かるところもあるが、読みにくさで字面を終う気になれないところもあった。十数頁で諦め、ちゃんと読んでいない。まとめにあたる部分を読むと、そんなに難しいことを言っているわけではないはずなのだが……。この本をもとに何かを学ぶというよりは、すでに頭にある構造とこの本の言っていることを対応づけながら、ああ、ここはこういう意味かと理解するような本だと感じた。言葉遣いが独特すぎて、廣松渉の言葉と説明をそのまま自分の思考に取り込むことが出来そうにないからだ。

『社会人の生き方』は、社会人という概念について、学生や当の社会人、さまざまな立場の人がどのように社会人というものを捉えているか、また著者自信がどのように社会人というものを考えているか、そしてどのように社会人というものを捉えるべきか、さらには人が社会人であるためにどのような社会環境や教育(シティズンシップ教育)が必要かといったことを具体例に触れながら示す本。返却期限が迫っていて斜め読みの箇所もあったので、もう一度読み返したい本である。